まるマッコリの日記(仮)

自分の思ったこと、好きなものを書いていきます。主に特撮やFGO。

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『ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝』感想 優麗に描かれる、お互いを想う愛と、紡がれる永遠。 

丁寧に、繊細に物語る「愛」

ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 - 永遠と自動手記人形 -』鑑賞しました。

京都アニメーションが手掛ける新作長編アニメです。悲惨な事故が記憶に新しい京都アニメーション、生み出されるアニメーションのクオリティは他の追随を許しません。この作品も例に漏れず。キャラクター達の過ごす風景、使用する道具、変化する表情。描かれるその1つ1つに、丁寧で繊細な仕事ぶりが伺えます。人の愛に触れるこの物語との相性は言わずもがな。視聴者に人を愛する事の素晴らしさを提供してくれる、そんな作品となっております。

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そんな『ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝』の感想をつらつらと。

 

 

イザベラの苦悩

テイラーの為に放り込まれた環境で、孤独を感じるイザベラ。これまでと次元が違う生活。慣れない教育。自分とは違う、人間達。擦り切れた彼女の心を、目や風貌がよく表していたと思います。

でもこれだけなら、彼女なら気にせず生きていけたのではないでしょうか。自分には関係ない。自分は自分のやりたいように生きる。以前の彼女ならこう考え、実行していた事でしょう。

 

テイラーの存在こそ、彼女の唯一にして最大の懸念点。テイラーの生活を守る為には、「大貴族・ヨーク家の娘」としての生活を守らなければならない。しかし、自分には到底できるようなものではない。周囲には味方もいない。テイラーもそばにいない。そんな寂しさと苦しみが、彼女の心を孤独の淵へと立たせます。

 

 

ヴァイオレットという新たな希望

ヴァイオレットの存在は、のちの彼女にとって一筋の光明になったことでしょう。自分と似たような境遇の持ち主だったことはもちろん、イザベラと「普通に」接していたという点も、かなり重要だと思います。

イザベラの通う学校はお嬢様学校。一定の礼節をもって、生徒達同士は交流します。そこには見えない上下関係のようなものもあったのでは。まるで仮面を被ったかのような関わり合いに、田舎育ちで孤児だったイザベラが対応できたとは思えません。慣れない交流は、精神的負荷に直結します。

またヴァイオレット着任以前の教育係も、「大貴族のお嬢様」というフィルターを通して接してきたことでしょうし、このフィルターを持って接してこられる以上は、「大貴族・ヨーク家の娘」として油断できない。イザベラの心が休まる暇はあまりなかったのではないでしょうか。

 

ヴァイオレットも一見礼儀正しく、貴族達のような一定の礼節を持って接しているようにも見えますが、彼女は「誰にでも」一定の礼節をもって接する、誰に対しても媚びない、フィルターを持ち合わせていない人間です。この彼女の接し方は、貴族社会に放り込まれたイザベラにとっては新鮮だったでしょう。それどころか安心感すらあった。ヴァイオレットと打ち解ける事ができた要因の1つはここにあると考えます。

 

さらに、ヴァイオレットがイザベラの盾になってくれる描写も多々ありましたね。一方的に教えるような教育係ではなく、イザベラの様子を見ながら、ときに見守り、ときに庇う、常にイザベラの存在そのものを気にかけた教育係として、後ろに立ち続けたヴァイオレット。これもまた、イザベラにとって、精神的にも強い支えになっていたのだと思います。

 

 

優雅に、華麗に

少しずつ打ち解けていくヴァイオレットとイザベラ。次第にお互いの過去を話すまでの仲になり、イザベラもお嬢様として少しずつ成長していく。

仲の深まった2人のダンスシーンは良かったですね。ヴァイオレットの男装姿と、綺麗に着飾ったイザベラの優雅なステップは、思わず見とれてしまいました。この優雅さや華麗さは、京都アニメーションならではの雰囲気ではないかと思います。(パンフレットの表紙が最高でした。是非ご購入ください。)

 

 

エイミーとして綴る「願い」

テイラーへの想いを綴り、手紙として形にする事を決めたイザベラ、もといエイミー。テイラーへ届いた文章は、非常に短いものでした。

 

きっと文章を考える段階で、色々な想いが巡った事でしょう。私なんかでは想像もつかないような、熱く優しい想いが。しかし、最終的な内容としては、捨て去った過去の名前を願いとして託す内容。

イザベラとしてあげられるものは無く、エイミーとしての人生も無くなってしまった。それに肝心のテイラーはまだ幼く、言葉の意味を理解してくれるか怪しい。それでもテイラーに残せるものがあるとすれば、エイミーとしてテイラーを大切に思い続けた思い出と、その時の感情だけ。

言葉では語り尽くせないその感情を、テイラーだけが知る過去の名前に閉じ込めて、それを手紙にした。

まだ言葉を話す事ができないテイラーに、エイミーの想いがどこまで伝わったのかは、はっきり分かりません。ただ、テイラーの涙には、これ以上ない純粋な想いが溢れていたと思います。

 

 

イザベラは、孤独ではない

ヴァイオレットが去ってからのイザベラにも、寄り添ってくれる人間がいた事が、このお話の素晴らしいところかなと。支えてくれたヴァイオレットもいなくなってしまい、再び孤独な生活が始まるのかと思われたが、そうではない。イザベラを、決して孤独にはさせない。「1人の人間として話したい」という最後の言葉は、このお話の神様の気遣いが感じられました。

 

 

強く育ったテイラー

話の後半はテイラーとベネディクトのお話。

エイミーとの思い出はもう思い出せなくとも、エイミーが想ってくれていたという事はしっかりと心に刻まれていたテイラー。ボロボロで今にも破れきってしまいそうな手紙や、一緒に暮らしていた時のぬいぐるみが大切にされていた事こそ、あの時の手紙は、しっかりテイラーに届いていたという、なによりの証です。

最後はエイミーの姿に涙しながら、忘れていた楽しかった日々を思い出します。「一人前になるまで会わない」という彼女の強い意志は、自分の為に全てを捨ててくれたエイミーに対する、せめてもの恩返しなのだと思います。

 

 

幸せ運ぶベネディクト

「郵便配達人が運ぶのは幸せ」

テイラー自身の体験から発せられるこの言葉は、ベネディクトの心を強く突き動かします。

テイラーの存在が、ベネディクトに「郵便配達人」としての誇りを持たせる。「届かなくていい手紙なんてない」と。

やっとの思いでイザベラに手紙を届けた事は、彼にとっては非常に有意義な経験になったと思います。

 

 

より人間らしくなったヴァイオレット

ヴァイオレットがより人間味が増していたのが、なんだかほっこりしましたね。眠そうだったり、ちょっと怒ってみたり、誰かの為に必死になったり。彼女の大きな成長を、所々に細やかに感じる事の出来る作品でもあったかなと思います。

 

 

紡がれた「永遠」 再び巡り会うその日まで

どんなに環境が変わろうとも、どんなに長い時間が経とうとも、二人の想いは変わらない。それはヴァイオレットとベネディクトが紡いだ「永遠」の絆。

イザベラが強くいられたのは、テイラーと過ごした時間が大切だったから。どこかで幸せに暮らしているであろうテイラーを想っていたから。

テイラーが強く、正しく育ったのは、なによりもエイミーがいたから。エイミーが想ってくれたから。

彼女たちが再び巡り会う日は、おそらくそう遠くない気がします。

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1人でも多くの方に

当初3週間の上映予定が延長された、ということで、この作品の人気ぶりが伺えますね。嬉しい限りです。他の人の感想でもたびたび聞きますが、この映画から見ても、作品の素晴らしさは十分伝わります。「愛」が溢れている作品です。

今作とは別に『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』も鋭意制作中との事なので、まだこの作品を知らない方にもぜひ。

どうかこの作品が、一人でも多くの方に知られますように。