晴らせぬ恨み、晴らします。
『地獄少女』鑑賞しました。
(画像引用元:https://gaga.ne.jp/jigokushoujo-movie/)
私はアニメからこの作品を知ったのですが、そのダークな世界観と当時は珍しかったドロドロとした人間の憎悪を描いた作風に、みるみるうちに虜になりました。主演の能登麻美子さんが個人的にハマり役過ぎて、私の中でしばらく「能登麻美=怖い人」のイメージが離れませんでしたね…。今も大差ないですが…。
ある時映画館の前を通ったら、この映画のポスターを発見。アニメ放送当時ヒーヒー言いながら目が離せなかった人間の醜さを、再び劇場で見る事ができると喜びました。キービジュアルから醸し出されるアニメさながら怪しげな雰囲気に、期待に胸を膨らませつつ、劇場へと足を運びました。
アニメを基準として鑑賞したのですが、エンドロールが流れる頃には、私の心の中にしっかりと「『地獄少女』を見た」という手ごたえが。予想以上の完成度にニヤニヤが止まりませんでした。
以下、感想をつらつらと。
『地獄少女』鑑賞
— まるマッコリ (@makkori04155) 2019年12月1日
人を呪わば穴二つ
憎しみは新たな憎しみを生み
人間社会には恨みが蔓延る
閻魔あい達を忠実に再現する為の配役
ダークな世界観の完全構築
そして契約者が契約前に体験する地獄
私はアニメでしか見た事が無かったが
間違いなく『実写版地獄少女』を見た#地獄少女 pic.twitter.com/HhOv5ePD8S
役者の完成度の高さ
まずもって玉城ティナさんが醸し出す雰囲気が、「閻魔あい」が纏う雰囲気とドンピシャだと思うんですよね。劇場用ポスターを見た時から期待していたのですが、いざ鑑賞してみるとその完成度に鳥肌が立ちました。
私が思う「閻魔あい」の魅力とは、作風と服装が似合いつつ、日本人離れした整った美しさと、得体の知れぬ不気味さだと思っていまして。和風美女では、「閻魔あい」の実写としては不足しているし、かといって外国人ではかけ離れすぎているという、見た目に加え雰囲気も人並みでは無い為、実写化するには難しいキャラクターだと思っていたんですよね。
この難しいキャラクターのビジュアル面において、玉城ティナさんは文句なしの見た目だと思います。ハーフ特有の日本人離れした整った顔立ちは、アニメのビジュアルを彷彿とさせてくれましたし、着物を着ても違和感がありません。
加えて彼女の表現力。かなりアニメ版の「閻魔あい」を意識したお芝居だったと。台詞や纏う空気感も、「閻魔あい」の持つ怪しげな雰囲気を忠実に再現できていたと思います。決め台詞となる「いっぺん、死んでみる?」もバッチリ。アニメで見た「閻魔あい」が、そっくりそのまま立体になった感覚でした。
三藁
三藁のビジュアル面の良好で原作さながら。こちらもアニメからそのまま飛び出したかのような完成度に驚きました。特に驚いたのは輪入道演じる麿赤兒さん。もうまんまアニメの輪入道なので、登場シーンで少し笑ってしまった…。骨女演じる橋本マナミさんの妖艶さもツボでしたし、一目連演じる楽駆さんのクールさも良い塩梅だったと思います。
さらに本作では必要以上に閻魔あいと関わる事なく、卒なく身辺調査を行い、淡々と契約を遂行していく姿が、作品の味をより深いものに仕上げていったと思います。『地獄少女』特有の仕事人のようなやりとりを強調する演出でした。
実写オリジナルの演出に思わず膝を打つ
契約のシーンはアニメと少々異なっていたのですが、この改変が私的には首を縦に振ってしまうものでして。「閻魔あいとの契約」をより業の深いものとして印象付けられたと思います。私が思わず唸ったのは主に3つ。
物語冒頭の契約した人間の末期のシーン
「死んだら地獄に落ちる」という契約により、苦悶の表情を浮かべながら死んでゆくという場面では、「人を呪わば穴二つ」というアニメお決まりの文言が、如実に描かれていたと思います。
契約により相手は地獄送り、依頼人も死んだら地獄送りという内容を冒頭で全て見せる事で、この後行われる契約が、単なる人殺し合戦で終わらなくなるんですよね。というのも、上映時間の関係上、やはり2人~3人は地獄に送られないと面白みがないし、かといって一方的にポンポン地獄に送られても、契約そのものが軽くなる。しかし冒頭で復讐する側と復讐される側を見せておく事で、誰かが地獄に送られても「この人は死ぬときにあんなふうになるんだな」と、観客が契約者を憐れむ事ができると思うんですよ。ここで観客としては「人を呪わば穴二つ」の意味を実感できる。実写では語られなかった台詞ですが、アニメでは聞き馴染みのある台詞がよく表現できていたと思います。
名前を入力し送信した直後の演出
パソコンの画面から無数の白い手だったり、触手のような物だったりが飛び出し契約者を誘う演出。
アニメではそんなシーンは無く、気づいたら彼岸に飛ばされるようになっていましたが、こと実写においてはこの演出のおかげで、作品が持つダークな側面を際立たせてくれていたと思います。これがもし実写とアニメが同じ演出なら、契約する事の重みが少し軽くなってしまう気がするんですよね。「この世ならざるものとの契約」を現実的に思わせる良い演出だったと感じました。
送信直後契約者が地獄の苦痛を体感するシーン
こちらもアニメには存在しませんでした。アニメでは言葉のみで「契約者も地獄に落ちる」と伝えられ、その概念を恐れる流れでした。しかし実写版では、契約者も落ちる地獄の苦しみを体験してもらった後に、黒藁人形の譲渡の為彼岸に飛ばされるという流れに。
この、前もって地獄を体験させるという流れがある事によって、契約する前の心の揺らぎや、契約に至った覚悟がより色濃く描かれていたと思うんですよね。地獄での苦しみを知っているからこそ、憎いあいつを落としたい。だから自分が落ちるのは辛いと分かっていながら紐を引く。このシーンの追加によって、契約する事の重みをよりハードなものに演出できる上、契約者の憎しみの大きさも良く表現できていたと考えています。
その他
アイドルが加害者を地獄に落とす→加害者家族がアイドルを地獄に落とすという流れを取り込んだ事で、契約者は恨みが強ければ誰でも構わないし、地獄に落とされる人も誰でもいいという、契約の無慈悲さを演出できていたと思います。この無慈悲さが止まらぬ憎しみの連鎖を非常に愉快に焚きつけてくれてました。
また、そこからさらに加害者家族が、同じ目にあわせようとアイドル家族に真相を伝えるも、拒絶され自殺する流れがある事で、あくまで「地獄通信」という舞台装置の上で繰り広げられる憎悪主体の人間ドラマがメインである事を強調されたような気がします。
それぞれの要素が合わさり快感に変わる
108分という上映時間の中で『地獄少女』が持つ魅力を十分に表現できていたと思います。ダークな世界観、無慈悲な舞台装置、止まらない憎しみの連鎖…。そこに役者達の完成度の高いビジュアルと表現力が加わった結果、私の中で「『地獄少女』を見た!」という快感が生まれたんだと思います。
アニメよりもホラーな演出が多かったですが、おかげでファンタジー感をあまり感じなかった為、実写化する上ではむしろちょうどいい塩梅でした。
まぁでも…突然飛び出す手とか…地獄で待っている苦しみとか…。
怖かったよね、正直。
…頑張ったわ、俺。