まるマッコリの日記(仮)

自分の思ったこと、好きなものを書いていきます。主に特撮やFGO。

まるマッコリの日記(仮)

『バトルスピリッツ サーガブレイヴ』第3話「永遠のキズナ」感想 過去を糧に、それぞれの想いを胸に、今なお2人は未来へ歩み続けている。

 少年は戦った。選ばれた仲間と共に、世界の在り方を変える為に。仲間との絆を武器に激突した末、世界を背負う事になった。

 少女は巻き込まれた。それまでの気ままな生活を脅かされた。それでも、熱苦しいアイツとの旅は、かけがえの無い良き思い出となった。

第50話 さらば、激突王!

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  • 発売日: 2017/09/01
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 青年は背負った。世界を存続させる為、自ら引き金となった。それは世界の在り方を変えたその時から、宿命付けられた事だったのかもしれない。

 娘は戦った。愛する青年の未来を存続させる為に立ち上がり、そして敗北した。しかしそれでも信じた。アイツが、笑顔で過ごせる未来がやってくる事を。

第50話 黎明

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 婦女は、再び戦っていた。今度は戦うフィールドを変え、その身を粉にして戦っていた。各地の仲間と思いを1つに、来るべき未来をより良くする為に。

 アイツが残した世界を、できるだけ良いものにしたい。焦燥にも似た熱意が、彼女の言動や行動に、痛いほど表れていた。動きやすさを重視したであろうその姿は、在りし日のアイツの面影を彷彿とさせる。どうなってしまったかも分からない、光の中へと消えてしまったアイツの面影が。

 ー青年は…、そして青年は…。

 

 

 

 予兆があった。嘗ての英雄の名を冠した奇跡が、それぞれの仲間の元にやってきた。その奇跡は、あるところでは消えたはずの英雄を体現させ、あるところでは、戦士となった友に戦い方や意味を諭した。いずれも仲間の窮地を救い、そして止まっていた時を動かすように、果たせなかった約束を果たしていった。 

 

 その奇跡は、当然婦女の元にもやってきた。しかし彼女の顔には困惑の表情が浮かぶ。またアイツは世界の為に戦うのか。またアイツに任せるしかないのか。その表情以上に、どれほどの思いが巡っていたのだろうか。

 再び危機が迫っている世界の為に、婦女達は動き出す。「コアの光主」としてできる事を実行していく。

 

 婦女の名前は紫乃宮魔ゐ。かつて未来の為に戦った人間の1人であり、今なお戦い続ける、紫の光を宿す者。

 青年の名は馬神ダン。世界存続の為に自ら引き金となり、消えたはずの世界に舞い戻った伝説。

 

 


バトルスピリッツ サーガブレイヴ 第3話

 思えば、魔ゐはダンとの再会を切望しているものだと思っていた。思い出の写真を眺めながら、今はいないアイツの影をいつも追い続けているのだと、思っていた。

 実際会いたい気持ちもあったのだろう。どことなく影を落とした姿には、大人としての落ち着き以上に寂しさが垣間見え、何よりあの服装である。そう、会いたくないわけがない。

 しかし彼女は「会いたい」と口にしなかった。敗北したあの日を、止められなかったあの時を後悔する姿は微塵も見せなかった。愛する人間が消えてしまったのにだ。どことなく寂しさを漂わせながらも、前向きな様子も見せる。それが彼女の持つ強さだったのかもしれないが、私は不思議で仕方なかった。

 

 ダンが復活して、私は喜んだ。バローネと健闘を讃える握手を交わす姿に涙し、カレーを片手に、ズングリーと昔のカードでバトスピを楽しむ姿に涙した。あの時果たせなかった約束が果たされたのだ。こんなに嬉しい事はない。

 次々と約束を果たし、仲間の前に姿を現すダンの姿を見て、私には当然のように、ある期待が湧き上がった。

 ーあぁ、これでやっと魔ゐとダンが再会できる。

 復活とはいえ、肉体を授かった様子でもない。おそらく「生き返った」とは、また違うのだろう。それでもいい。ひと目でも魔ゐの元に姿を現してくれれば、私はそれで満足だった。そして再会は当然のように現実になると思っていた。

 私の勝手な期待を他所に、『バトルスピリッツ サーガブレイヴ』第3話は配信日を迎えた。ついに来た最終話。およそ10年待ち望んだ再会の時だ!私は興奮を抑えつつ、仕事帰りの電車の中で、そっとアプリを開いた。

 

 

 …再会は果たされなかった。厳密に言えば、魔ゐの前にダンが姿を現す事はなかった。

それも魔ゐの前だけに、ダンは姿を現さなかったのだ。しかし、そこに寂しさや悲しみは無い。私が考えていた以上に、魔ゐとダンのキズナは深く、計り知れない程固く結ばれている事を突きつけられたらからだ。

 

 魔ゐは、ダンが生きている事を確信していた。会いたいという感情の上を行く想いを抱いていた。だからこその第一声。「おかえり」でもなく「会いたかった」でもなく、「遅いよ」なのだ。彼が帰ってくる事を前提としている上に、彼が生きていると思って今まで過ごしてきたという、何よりの証だと感じた。

 さらに語られるのはダンが戦い続ける理由。「思い続けてくれるから」は、魔ゐにとってどのような感情を抱かせたのだろうか。離れていても存在を感じ続けてくれていた事への喜びだろうか、自分の思いが彼を戦いに駆り出しているという悲しみだろうか。喜びとも悲しみとも取れる想いが表情に表れ、両目から涙が溢れる様子に、嗚咽する程の感情の波が押し寄せてきた。

 2人の間で交わされた言葉は少ない。それでも確かに意志の疎通はあったと思う。長年待ち望んだ、愛するもの同士のやりとり。共に戦い、旅をしてきたあの2人にしか分からないやりとりが、その視線の間に無数に行き交っているように感じた。

バトルスピリッツ/BSC29-019 大切なもの

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 何より驚いたのは、あの2人には後悔がなかった事だ。引き金になったことも、引き金となるのを止められなかった事も、その全てを「自分が生きた時間」として抱き込み、前に進んでいた事に、私は涙を抑える事ができなかった。2人の思いは過去には無い。彼らは未来を歩む為、常に前を進む為に過去を思い出としたのだと知ったとき、私の胸は言いようの無い感情で満たされた。

 会えなかったのではない、会わなかったのだ。会う必要がなかったのだ。魔ゐもダンも、離れていながらもお互いを思い合っていたから、繋がっていたからこそ、ダンは魔ゐの前に姿を表さなかったのではないかと思う。

 それはコアの光主同士だからもあるだろうが、友情と愛情が混在しているあの2人だからこそ、許される関係なのではなかろうか。

 

 

  

 この話の全てに納得ができたかと言えば、そうではない。突然飛び出す謎の単語、解決せぬまま進行する悪意、突如として出現した第三の世界。続編の制作が決まったとはいえ、最終話としてのクオリテイとしては、不満が残った。

 

 それでも、それでも私は思う。良い作品だったと。「ありがとうございました」と、泣きながら右手を差し出してしまう。

 仲間の思いを胸に、自分の居場所をバトルフィールドに求めながらも、心配する魔ゐにどこか申し訳なさを感じるダン。心のどこかで戦いに出る彼を止めたいと思いながらも、彼の事を理解しつつ、彼の真っ直ぐな思いを尊重し何も言わない魔ゐ。この2人の、不器用ながらも美しくお互いを尊重し合う姿を確認できた事は、コアの光主からバトスピの素晴らしさを知った私としては、これ以上ない喜びなのだ。

 およそ10年の時を経て描かれた黎明のその先、離れていても繋がり続けていた永遠のキズナに、今なお私は咽び泣いている。

 

 

 『バトルスピリッツ サーガブレイヴ』第3話「永遠のキズナ」、鑑賞しました。

YouTube配信とはいいですね。いつでもどこでも、好きな時に作品を見直す事ができます。

 これからも、つらつら見直す事でしょう。約束が果たされ、永遠のキズナを感じる事ができる、この神話を。