まるマッコリの日記(仮)

自分の思ったこと、好きなものを書いていきます。主に特撮やFGO。

まるマッコリの日記(仮)

『スキャンダル』感想 言い表せない空虚な気持ちこそ、この映画に対する正解なのだと思う。

 …感想をまとめるのに時間がかかってしまった。鑑賞したのは結構前の話なのだが、如何せん私の知識や感性が乏しく、中々文字にまとまらない日々が続いた。

 が、とりあえずまとまったのでネットの海に流す事にした。

 

 さてさて。映画に何を求めるのかを、時々考える。基本的にはエンターテイメントなのだから、「楽しい」に越したことはない。ただその楽しいにも色々種類があって、単純に笑い転げるような「楽しい」もあれば、次の展開が気になって仕方ないというスリルを味わう「楽しい」なんかもある。

 どんな楽しいも好きなのだが、この「楽しい」を感じるには、条件が存在する。知識や経験があるかどうかだ。知っているか知らないか、感じた事があるかないかは「楽しむ」という普遍的な感情に大きく関わってくる。昨今のエンタメは知らなくても楽しめる仕様のものもたくさんあるが、そういったエンタメにも「知っておいた方がより楽しめる」といった隠し要素は豊富に含まれている。個人的な見解だが、エンタメを楽しむ事において、基本的に知っておいて損な事は無いし、経験しておいて損な事も無いと思っている。

 それにこの知識や経験は、集まれば集まる程、「察する」という能力に一役買う。「空気を読む」という能力は現代社会においては重宝する。これほど世の中を渡りやすくしてくれる能力は無い。それに「察する」能力が高ければ、それだけエンタメを楽しむ幅も広がってくる。「シティーボーイズ」なんかはその典型例ではなかろうか。

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 さて、知識や経験の話。逆を言えば、作品を楽しめなかったとき、私は知識や経験が足りなかったのだと自戒する。自戒した時は、いつも以上にネットの海に潜る。テーマとして掲げられているものを調べたり、他の人の感想を読んだりして、後付けではあるものの自分の不足していた分を埋める。そうやってイマイチだった作品を、楽しかった作品へと昇華していくのが、私の映画の「楽しい」だ。

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 この映画『スキャンダル』の鑑賞後も、恥ずかしながらネットの海に潜った。深く、深く。できるだけ深く潜った。理解が足りない事が多々あり、潜る度に発見があった。筋の通った自身にない見解は、水の底でキラキラと輝いて見える。これだ。これが私の映画の楽しみ方なのだ。

 

 

 面白かったのは、おそらく男性と女性で、この映画の感想が微妙に異なっている事だ。昨今の時勢から、この映画が取りあげるテーマを考える姿勢は同じなのだが、ロジャー失脚までのグレッチェン、メーガン、ケイラの姿勢に感じ方の違いがあったように思われる。

 映画では3人は決して直接的な協力関係にないのだが、ここに違和感を覚える男性が多かったように思われた。私も例に漏れず、だ。「ロジャーというセクハラ親父を被害者3人が打倒する」という勧善懲悪ストーリーであれば、3人が対面し、文字通り手と手を取り合い、協力して打倒ロジャーを画策するのが一般的だと私は思っている。しかし、この映画はそうはならなかった。3人、いや2人はあくまで個人的に、行動を起こしていった。

 

 

 正確には起こしていったと言うより。個人的にしか動けなかったのだ。これは男の私には知識も経験もなく、察する能力も欠如していた事で理解が遅れてしまった。ただただ自身を恥じるばかりである。

「自分も被害にあいました」なんて、簡単に言える事ではないのだ。ただでさえ嫌な思い出をまた蒸し返す上に、自身のプライドを踏みにじる事になりかねない。私が言うのもおこがましいが、「嫌な思いをしました」と簡単に声を上げられる程、事は単純ではないのだと思う。

 だから、彼女たちは協力しない。あくまで個人的に動く。匿名で「被害にあった」と告げる。お互いに示し合わせる事なく、それぞれの正しいと思うやり方で、非道に一矢報いるのだ。ここに、どうやら女性のリアルがあるようだ。

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 そう、この映画。「ロジャーというセクハラ親父を被害者3人が打倒する」という勧善懲悪ストーリーではないのだ。「性的被害にあった女性達のとある数日」という密着ドキュメンタリーに近い。実話を基にしているとはいえ、映像の魅せ方などから、かなり意図的にやっていると思うし、役者陣のヒリヒリとした自然な演技や醸し出す空気感が、この映画から創作という要素を霧散させる。

 故に、男性が見ると、少々元足りなさを感じるかもしれない。スパッと悪い奴を倒して一件落着ビールで乾杯!なんて爽快な話ではないからだ。ロジャーの後継人が男性である事から、状況はさほど好転していない事も含めて。

 協力はしないから滾るものもなく、状況はさほど変わっていないから達成感もない。でもそれで正しい。これは今なお現実に転がっている事実なのだから。

 男の私にとって、これは「知る」を「楽しむ」映画だと思うのだ。こうしてまた1つ、私の中で「楽しい」映画が増えた事を、じっくりと噛み締めている。

 

 

 

 FOXと対極の考え方を示す業界の作品なので、そのまま受け入れる事は危ないだろうが、事実を確認した以上、これまで以上に気を付けなければならないと思う。日本だから関係ないなんて事は、たぶんないのだろう。

 鑑賞後、勝利でも敗北でもない、問題は解決していないという何とも言えない空虚な気持ちが、私の心にじわじわと広がっていった。ただ、それがこの映画に対する正解なのではないかと、今では思う。この気持ち、大事にしていかなければならない気がするのだ。

Bombshell (Original Music from the Motion Picture Soundtrack)

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