まるマッコリの日記(仮)

自分の思ったこと、好きなものを書いていきます。主に特撮やFGO。

まるマッコリの日記(仮)

『グッドバイ~嘘からはじまる人生喜劇~』感想 人の優しさこそ、喜劇。

『グッドバイ~嘘からはじまる人生喜劇~』映画前売券(一般券)(ムビチケEメール送付タイプ)

good-bye-movie.jp

 

 良くも悪くも、時代の流れってあると思うんですよ。昔は許されていたものが、今は許されていないとか。その逆もまた然り。その時その時によって良しとされるものが変わってくる、つまりはその時代を生きる人間の価値観の変化が、その時代の流れを決定していると思うんですよね。

 生きる時代を選べないのが人間の生まれ持った宿命でして、時代の流れに乗って華やかに生きていく人間もいれば、流れについていけず廃れていく人間もいるのが世界ってもんです。ただ乗れるか廃れるかの二極化しているわけではなく、半分乗れて半分廃れてみたいな人間も存在するのが、また面白かったりするんですが。

 私は、どちらかと言えば廃れていく側だと自負しております。「新しいものや流行りに乗れない」といった悩みをこのブログでもぶちまけてきたんですが、力の集まっているものに馴染めない人間なので、日々小さくなっていく自分を感じながら、今日もなんとか生きている状態です。

marumakkoriblog.hatenablog.com

 

 

 馴染めないからでしょうね、この映画の舞台「戦後すぐの日本」にちょっと眩しいものを感じてしまって…。

 敗戦直後なので貧しい事には間違いないし、今と比べ物にならない程不便であるので、その時代に生きたいかと言われれば首を縦には振れません。しかし明治~昭和初期の日本には、人の優しさや活気が溢れていたように感じるのです。それが堪らなく羨ましい。たぶん、今の私が他人に求めるもの、なにより自分自身に求めるものが、あの時代の人達には溢れていたように思います。

グッド・バイ (新潮文庫)

グッド・バイ (新潮文庫)

 

 

 

 さてこのお話。主人公田島周二が不倫していたわけなんですが、どうにも憎めないのが非常におもしろいというか。昨今の世の中では考えられないほどカラッとした印象を抱かせます。不倫相手となった女性達も、妻の静江でさえも、どこか周二に対して爽やかな印象を持っている。当然嘘をつかれた事に対しては怒っているわけなのですが、私同様にどうにも憎めないという感じ。これも時代なんでしょうかね…。

 誰もがどこか寛容的なんですよ。その時は許せないと怒っていても、次の場面では笑い話になっている。喜劇だからと言われればそれまでなのでしょうが、むしろその寛容さこそが喜劇となっているのではないかと感じるのです。

 

 大変な時代ではあったと思います。でも誰もが大変だった事を分かっていたからこそ、みんながどこか貧しさを抱えていたからこそ、近くにいる誰かの事を思いやれていた、そんな時代でもあったのかなと。人と人との関りに温かみがあったが故に、そこに楽しさがあったのかなと。喜劇が溢れていたのかなと、私は思うのです。

 人の温かさが生む喜劇。笑いながらも穏やかな気持ちでいられる、よい映画だったなと。しみじみ思っています。

グッドバイ

グッドバイ

 

生きてます

 取り急ぎご報告。生きてます。

 先々週ぐらいから体調を崩し、ブログの更新を控えてました。

 少しずつ積み重なる仕事の責任と、暑かったり寒かったりとはっきりしない気候変動。加えて「コロナ」関連による心労などが重なり、まぁ平たく言えば心が疲れ切ってしまいました。

 今では体調もそれなりに回復し、ブログの更新を再開したいところなのですが、まずはたまっていた仕事を消化するのに時間がかかる模様。更新はまだ先になりそうです。

とりあえずできる時間を見つけては記事をしたためていければなと、あとは読んでないブログもたくさんあるので、その辺りを読破できればなと、思っている次第です。

とりあえずご報告でした。

 

 

『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』感想 推理もの初心者の私が、何故この映画を楽しめたのか。

 『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』 、鑑賞しました。

映画ポスター ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密 ダニエル・クレイグ/インテリア アート おしゃれ フレーム別/両面

longride.jp

 

 推理ものって、どう見るか悩みませんか?たぶん犯人捜ししながらの方が楽しめるんでしょうが、恥ずかしながら私、物語を見ていてもイマイチピンとこないんですよね。矛盾点探すのが苦手みたいで…。かと言って何となく見るのも違う気がしてならない…。果たして正解は如何に。

 まぁでも、トリックが暴かれる瞬間は、何となく見ていてもそれなりにビックリできるので、作品がつまらないなんて事がないのは幸いですかね。ちなみに一番好きなトリックは『名探偵コナン』の「呪いの仮面は冷たく笑う」。オカルトチックな演出が放送当時痺れました。

第184話「呪いの仮面は冷たく笑う」

第184話「呪いの仮面は冷たく笑う」

  • 発売日: 2018/06/19
  • メディア: Prime Video
 

 

 さてさて。映画の話を戻ると、今回の映画は推理もの。感想を書くにあたってやはり考慮しなきゃいけないのが、犯人が誰だったか等のネタバレ。いろんな人の感想を読んできたのですが、ネタバレにならないように感想を書いていた人、ネタバレありきである事を告知して感想を書いていた人と様々でしたね。

 当ブログでは「感想つらつら」表記が実質「以下ネタバレ含みます」表記としているつもりなのですが、今回は改めて表記させていただきます。以下ネタバレ含みます。

  と言っても、「トリックは○○でした」「犯人は○○でした」なんてストレートに書くのはさすがに興醒め。せっかくの私の感想の場なので、「推理ものを楽しむ術を知らぬ人間が如何にこの映画に引き込まれたか」を書いていこうかなと思っています。

 以下、感想をつらつらと。

 

 

 事件が起きて容疑者の取り調べからスタートする本作。真犯人以外の容疑者の嘘があらかじめ視聴者にだけ披露されている事で、素人の私でもぐっと引き込まれるんですよ。有名なところだと『古畑任三郎』あたりがこのスタイルでしたね。どうやら「倒叙もの」と言うらしい。

古畑任三郎 COMPLETE Blu-ray BOX

古畑任三郎 COMPLETE Blu-ray BOX

 

 

 結局真犯人は別にいたので、この映画が倒叙ものかと言われればたぶん違うのですが…。
 先に嘘が明かされるという意味での「古畑任三郎スタイル」。私みたいな素人には非常にありがたいんですよね。このスタイルのおかげで、楽しむポイントが一気に絞られてくる。

 犯人が分からぬまま証拠を集めていくストーリーだと、私みたいな素人にはちっともピンとこないんです。多少怪しいなと思っていても、その怪しさを解消させる道筋までには至らないので、結局探偵の答え合わせを待つしかない。加えてあれもこれもと疑ってしまうので、物語への注意力が散漫になってしまうんですよ。

集中力 (サンマーク文庫)

集中力 (サンマーク文庫)

 

 

 しかし、今回の嘘をばらしてくれるスタイルだと、「何を怪しむべきか」「どのように容疑者がごまかしていくか」の2つに絞って、物語を楽しむ事ができるんです。誰が嘘をついているかが分かっているので、疑いをかける人間は明確化されていますし、疑う人間が明確になっているからこそ、探偵と犯人のやりとりに緊張感が生まれる。探偵側の視点からみればどう暴くか、犯人側の視点から見ればどう回避するかを、割とはっきり意識する事ができるから、物語をぐっと楽しむ事ができるんですよ。

 

 

 さらに良かったのは「嘘をつくと吐く」という特徴を持ったマルタの存在。この特徴のおかげで、注目すべきポイントがさらにに絞られてくる。家族全体を見てきたマルタがこの特徴を持っているのがなお良いです。視聴者用のウソ発見器とでもいいましょうか、何を信じて良いのかが明確化される。言い換えれば、証言対して判断基準ができるので、物語での証言や事象を整理しやすくなります。

イエスタデイ(オリジナル・サウンドトラック)

イエスタデイ(オリジナル・サウンドトラック)

  • アーティスト:ヒメーシュ・パテル
  • 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック
  • 発売日: 2019/10/02
  • メディア: CD
 

 

 

 上記の様に必要要素が明確になっているから、最後の推理ショーで得られる納得感が尋常じゃない。「チェーホフの銃」がしっかりと発砲する瞬間を感じる事ができるんですよ。「あぁグレートの“また”はそういう事だったのか」「犬が吠えたタイミングはここだったのか」などなど。じゃんじゃん舞台上に用意された銃の引き金が、次々に引かれていくのを実感できる。実に気持ちが良い。

 もっと言えば、舞台上に用意してない銃の引き金を引かないのも良かったですね。マルタが通った道をランサムも通ったといった展開とか、お話で出てこなかったものが登場しない事でスッキリとした印象を持てます。

 

 後は細かいところにもギミックが仕込まれていたのも面白い。「最初に登場したマグカップが最後にいい味を出してくる」「父親に鍛えられたリンダがあぶり出しの手紙に気づく」などなど。細かいところまでフラグ回収がきっちりなされていた事が、実に爽快でした。そうそう、嘘ついた時の吐しゃ物がランサムへの反撃になるとは(笑)。

 

 

 さてさて。つらつら面白かった要素を書いてきたわけなんですが、もちろん真犯人が別にいたという要素も「楽しかった」という感想に一枚かんでいます。ただこの要素も、前述した分かりやすさがあったからこそ、楽しめたのではないかなというのが個人的な感想。

 ついでに、さらに個人的に好きな点を挙げるなら、探偵ブノワのキャラクター。『古畑任三郎』もそうですが『刑事コロンボ』とか『相棒』とか、ああいう飄々とした探偵に弱いんですよね…。ああいう大人に、私はなりたい。

 

 

theriver.jp

 映画の帰りに「続編があるといいね」なんて彼女と話してたんですが、どうやら準備はしているらしい。やったぜ。

 とまぁ続編を期待してしまうくらいには、私としては珍しく推理ものを楽しんでいました。いやー気持ちよかった。金銭的にもスケジュール的にも結構無理して見に行ったのですが、鑑賞できて良かったです。2時間があっという間でした。

 …「倒叙もの」、私のツボなのかもしれません。

『スーパー戦隊MOVIEパーティー 劇場版 騎士竜戦隊リュウソウジャーVSルパンレンジャーVSパトレンジャー/魔進戦隊キラメイジャー エピソードZERO』感想 タイトルの長さ通りのパーティー感、エンジョイしなきゃもったいない。

P.A.R.T.Y

スーパー戦隊MOVIEパーティー 劇場版 騎士竜戦隊リュウソウジャーVSルパンレンジャーVSパトレンジャー/魔進戦隊キラメイジャー エピソードZERO』、鑑賞しました。

映画チラシ『劇場版 騎士竜戦隊リュウソウジャーVSルパンレンジャーVSパトレンジャー』5枚セット+おまけ最新映画チラシ3枚

 

 久々のVSシリーズ。しかも今回は新戦隊もやってくる上にプリキュアも踊っちゃうという夢のコラボレーション。ヒーローが渋滞しているカオス感、私は好きです。

 …ただ恥ずかしながら、『騎士竜戦隊リュウソウジャー』をオンタイムで追えてないんですよね。今一生懸命後追いしているところです。具体的には40話まで視聴済み。やっと背中が見えてきたところです。噂には聞いていたんですが、なんというか、「リュウソウ族」らしさが中々味が出てますね。ある意味これまでの戦隊にない独自性があると思います。割と私は好きです。

 そんなリュウソウ族とルパパト勢とのクロスオーバー、加えて新勢力『魔進戦隊キラメイジャー』のスタート、プリキュアとのダンス。どうなるのこれ(笑)。

 以下、感想をつらつらと。 

 

 

VSパート

 VSパートは非常に緻密に作り上げられていたと思います。『騎士竜戦隊リュウソウジャー』、『怪盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』が持つ特徴が見事にかみ合って交わるのが、見ていて気持ちが良かったです。

 どちらかと言えば、ルパパトの世界にリュウソウが入り込んできた印象なのですが、ルパパトの方が先輩ですし、ルパパトの物語が完結している分、リュウソウの面々を誘導する余裕があると思うんですよね。だから、物語の主導権がルパパトにあっても何ら問題は無いかと個人的には思います。

 

 とはいえ完全にルパパトのペースかと言われればそうでもなく、何より騎士竜がピンチに陥る話なので、きちんとリュウソウのお話としても描かれています。コウ達の騎士竜に対する思いを感じさせる内容となっており、その決断や行動には、これまでのような「リュウソウ族らしさ」を感じさせる場面も。この合間に、魁利達のその後、圭一郎達とのその後を感じさせてくれて、VS作品に相応しい見事なクロスオーバーだったなと思います。

 

 敵のギミックもVS作品らしくそれぞれの戦隊のギミックが入り混じっていて非常に強力。マイナソ―を倒す為にギャングラーを倒したいが、ギャングラーを倒す前に騎士竜達を救わなければならないと言う二段構えが、非常に良かったです。

 最後の戦闘シーンなんかも、各々の戦隊の武器を交換し合って戦うのは、非常に滾りましたね。リュウソウジャーの面々がダイヤルファイターやトリガーマシンを使い、ルパパト勢はリュウソウルで強化。時にはそれらを組み合わせて戦ったりと、非常にバラエティ豊かな戦闘でした。めちゃくちゃ楽しかった。最後まで良く組み合わさったVS作品だったと思います。

 

 

キラメイジャーパート

 キラメイジャーパートはエピソード0と言う事で、主要人物の紹介としては十分な内容だったかなと思います。敵も味方も、そのキャラクターの概要を何となく掴む分には十分だったかなと。まさにエピソード0。キラメイジャーの戦闘スタイルも垣間見えて、期待値を上げる導入としても申し分ないお話でした。

 あとキラメイストーンね。記者会見の時も思ったけど、思ったよりでかい…。そしてまさかあのまま自走するとは…。いや宝石の国・クリスタリア、中々凄い国やぞ…。

 

 

ダンスパート

 最後のダンスでは、キラメイジャーとキラキラ繋がりで『スター☆トゥインクルプリキュア』の面々が登場。プリキュアのエンディング曲に合わせてキラメイジャーもダンス。その後は、リュウソウ、ルパパト、キュアエールとキュアグレースも仲間に加えてケボーンダンスで締め。いや、凄いね。ほんとにみんなで踊ってるよ。

 

 私が鑑賞した際、このダンスパートがスタートする前に帰ってしまうお客さんが結構いらっしゃったのですが、どうやら子供達には大好評のようで、私的には一安心。小さい時って、お兄ちゃん、お姉ちゃん、または弟や妹の都合に合わせて、興味が無い戦隊やプリキュアに付き合わされる時あるじゃないですか。その辺を解消してくれたのが、今回の企画だと思うんですよね。大人からするとごった煮感があって確かに途惑う感じもあるとは思うのですが、子供からすれば、大好きなヒーローが満遍なく登場して踊っている訳で。お子様ランチみたいな状態だと思うんですよね。何かしら1品好きなものがある状態。そりゃテンションあがりますよ。

 次回もあるかどうか分かりませんが、ぜひ継続して戦隊とプリキュアが躍っていて欲しいなと思います。個人的にも楽しかった(笑)。

スター☆トゥインクルプリキュア後期主題歌シングル(CD+DVD)

スター☆トゥインクルプリキュア後期主題歌シングル(CD+DVD)

 

 

 

来年もぜひ

 内容も盛沢山でしたが、文字通りパーティー感があって良かったですね。結構楽しめました。VSシリーズは一時は途絶えてしまっていたので、復活してくれて嬉しくもあったり。いやぁ、良かった良かった。

 来年もぜひまたやって欲しいな、このパーティー…。

『ジョジョ・ラビット』感想 軽快さの中に確かなメッセージ性、必ず最後に愛は勝つ。

 『ジョジョ・ラビット』、鑑賞しました。

ジョジョ・ラビット (オリジナル・サウンドトラック)

www.foxmovies-jp.com

 

  高校では世界史をとっていなかったので、正直歴史的背景への理解は乏しいです。なので、ナチスドイツやヒトラーについては、NHKの番組で知った程度のざっくりとした知識しか持ち合わせていません。

 それでもこの映画を見たいと思ったのは、子供が主人公である事と、予告のポップさ。第二次世界大戦中のドイツとは思えない作風に、妙な期待感が募りました。戦争が舞台となっている作品は、その多くはシリアスな雰囲気で、悲しい結末を迎えるものが多い印象。決してそんな映画が嫌いなわけではないのですが、「この映画はいつもと違うな」という期待と好奇心を掻き立てるものが、本作の予告にはあったのです。


タイカ・ワイティティ監督がヒトラーに!映画『ジョジョ・ラビット』日本版予告編

 

 ナチスドイツという負の歴史を舞台に、こんなにも軽やかに予告するこの映画。少年らしい少年兵・ジョジョ、コミカルな内なる友達・ヒトラー、むしろ挑戦的な作品だと私は思いました。そのチャレンジスピリッツにどこか高揚感もあったりして…。とにかく、この映画が楽しみで仕方なかった。

 以下、感想をつらつらと。

 

 

 「正義を信じた少年が、愛によってその正義の定義を改めていく」のが本作。少年漫画のような、王道でハートフルな作品だったと思います。そんな作風だからこそ、ジョジョナチスへの忠誠心が痛く染みます。子供ながらの純粋さ故に、ヒトラーの事を正義だと、ヒーローだと信じているんですよ。内なる友達としてヒトラーが存在している事からも、彼の忠誠心の高さが分かります。

 彼の心が弱ったときに、ヒトラーが鼓舞してくれるのが、また何とも皮肉めいているというか。悪しき歴史として後世で語り継がれている存在も、当時はヒーローの様に崇めていた人達がいたんだなという普遍的な事実を、まざまざと見せつけられます。ジョジョヒトラーのやりとりは非常にポップで楽しくて、思わず笑ってしまう場面も多々あったのですが、笑う度に心にチクっと何かが刺さる。そんな映画でした。

ジョジョ・ラビット (オリジナル・サウンドトラック)

ジョジョ・ラビット (オリジナル・サウンドトラック)

  • 発売日: 2019/10/18
  • メディア: MP3 ダウンロード
 

  

 

 そんな根っからのナチス支持者であるジョジョが、密かに反ナチスを掲げる母親・ロージーや、母親に匿われていたユダヤ人少女・エルサなど、時代に流されない人々との関わりの中で様々な愛情を学んでいきます。「愛は最強」と謳う本作。ジョジョが人間らしく成長する過程にあったのは、人を愛する事の素晴らしさを説くロージーの愛情だったり、時代に翻弄されながらも自分の意志で強く生きるエルサの姿だったり、ジョジョの周りの人間には、幸運にも「自分らしさ」に溢れた人ばかりでした。

 様々な愛情を感じたからこそ、ジョジョの中で揺れが生じるんですよ。それが非常に分かりやすく描かれている。それが、内なる友達ヒトラー。物語が進むにつれて内なるヒトラーが私達が知るようなヒトラーらしくなっていき、ジョジョとの対立が深まっていく。これが非常に良い。曲がりなりにも後世の歴史を知る人間としては、心の中で密かにジョジョに声援を送ってしまうのです。そうだ、ジョジョヒトラーとはそういう人物なのだと。

 

 ヒトラーらしさが高まったという事は、ジョジョの中で「ヒトラーはヒーローではない」という違和感が強まったって事ですし、愛国心ではない、ジョジョ自身の自我が芽生えてきている証拠だと思うんですよ。自我が芽生えていくから、内なるヒトラージョジョの意見が合わなくなる。少しずつナチスへの認識に変化があったからこそ、内なるヒトラーは協力的ではなくなる。ジョジョが戸惑う場面も増えていくのですが、迷いながらも「人間らしく」生きていく道を進んでいくのです。これがどんなに希望に満ちていた事か。観客の私としては、非常に喜ばしかったです。

 何も知らない少年が、戦争と言う間違った常識の中で人の愛情に触れ、人への愛情を感じ、人の愛情で生かされる。そして、人への愛情を持って人となる。人間賛歌、愛情賛歌とでも言うべき本作は、戦争憎しではない軽快な作風であれど、中にはものすごく力強いメッセージが込められていたと思います。

ジョジョ・ラビット (オリジナル・スコア)

ジョジョ・ラビット (オリジナル・スコア)

  • 発売日: 2019/10/18
  • メディア: MP3 ダウンロード
 

 

 

 良かったのはシナリオだけではありません。ポップな作風にあった音楽が非常に秀逸で、聞き心地が良いです。あくまでも1人の少年が大人になっていくお話。戦争と言う舞台の中でも、未来ある若者のひと時を明るく彩る楽曲が使用されていました。さしずめ応援歌のように。

 また、街並みやジョジョ達の服装なんかもオシャレで、戦時中である事を忘れさせます。決して華やかなわけではないのだけど、貧しい生活を送っている事は分かるのだけれど、それでも明るい。とにかく細部まで楽しい映像でした。

カールじいさんの空飛ぶ家 (オリジナル・サウンドトラック)

カールじいさんの空飛ぶ家 (オリジナル・サウンドトラック)

  • 発売日: 2019/11/18
  • メディア: MP3 ダウンロード
 

 

 極めつけは、そのメッセージ性の強いシナリオに負けない役者陣の熱演。個人的に特にお気に入りなのは、1人ながらも子への愛に溢れたロージーを演じるスカーレット・ヨハンソン。彼女の演じる母親無しには、ジョジョという人間の成長譚は成立しなかったでしょう。言葉だけでない、その表情、その仕草、その空気感から、我が子への愛に、未来への希望に満ちている。その姿は、非常に理想的な母親そのものだったと思います。

 もちろん、今回が初主演となるジョジョ役のローマン・グリフィン・デイビスの無垢な少年っぷりは物語の重要な核でしたし、エルサ役のトーマシン・マッケンジーの纏う強さには、ジョジョを成長させるに十分な刺激がありました。サム・ロックウェルの演じるクレンツェンドルフ大尉の最後には涙が止まらなかったし、レベル・ウィルソンが演じるミス・ラーム、タイカ・ワイティティが演じるアドルフ・ヒトラーには、知識に乏しい私ですら恐怖してしまう程、悪しき歴史の担い手として表現されていたと思います。

LUCY/ルーシー (字幕版)

LUCY/ルーシー (字幕版)

  • 発売日: 2014/12/18
  • メディア: Prime Video
 
マイティ・ソー バトルロイヤル (吹替版)

マイティ・ソー バトルロイヤル (吹替版)

  • 発売日: 2018/01/10
  • メディア: Prime Video
 

 

 

 楽しい映画でした。しかし非常にメッセージ性の強い映画でもありました。一見してミスマッチであろう舞台と作風が見事に合致していて、だからこそ非常に感動的でした。新鮮味に溢れているのに、普遍的で重要な事を改めて突き付けてくる本作。人に愛され、人を愛する事から人であり始める事を改めて気づかされ、自分の在り方を顧みるばかりです。

 今はただ、良き人達に囲まれていたジョジョが本当に羨ましいですよ(笑)。

愛は勝つ

愛は勝つ

  • アーティスト:KAN
  • 出版社/メーカー: ポリドール
  • 発売日: 1990/09/01
  • メディア: CD