まるマッコリの日記(仮)

自分の思ったこと、好きなものを書いていきます。主に特撮やFGO。

まるマッコリの日記(仮)

『水曜日のシネマ』感想 映画が伝えるキャラクター性、感動が人を作る。

映画が好きになれたきっかけの1つ

『水曜日のシネマ』、読了しました。

水曜日のシネマ(1) (モーニング KC)

 

作者である野原多央先生が、自身のTwitterで1話を無料公開されていたのを見つけ、読み始めました。

暇さえあれば虫のようにTwitterに張り付いているのですが、もう少し控えた方がいいと思いつつ、こんな出会いがあるのでやめられない、負のスパイラルを繰り返している今日この頃です…。

ただこの漫画を見つけた当時、私自身映画館で映画を見る楽しみを理解し始めた頃だった為、とても親近感がわいたというか、タイミング的に非常に興味をそそられたんですよね。運命的なものを感じた為、1話を読み終えた直後に電子書籍を購入しました。

映画を題材にした作品だけあって、漫画の中ではたくさんの映画が紹介されます。私が見た事がない作品もたくさんあったので、映画に関する知見や楽しみが広がりました。

本来であれば紹介された映画を鑑賞した上で感想を書くのが筋だと思うのですが、感想はできるだけ早い方がいいとも思っておりまして。(といっても最終巻が発売されてからかなり時間が経ったので今更な感じもあると思いますが…。)取り急ぎ記事にしたためている次第です。作中で紹介された映画と絡めた感想は、後日取り上げたいと思っています。

以下、つらつらと。 

水曜日のシネマ(2) (モーニング KC)

水曜日のシネマ(2) (モーニング KC)

 

 

 

ざっくりあらすじ

女子大生の藤田さんはレンタルビデオ店でアルバイトをしていましたが、初めてのアルバイト故にバタバタ。なかなかうまくゆきません。映画に詳しくない彼女はお客さんに質問されてもうまく返答することができず、仕事の話にもついていけない為、自身の子供っぽさに落胆していました。

しかし今まで怖い人だと思っていた店長奥田さんが、映画の話を楽しそうにする姿に心惹かれ、映画をよく知りたいと懇願。毎週水曜日、彼女は友達でも恋人でもない男と二人きりで、映画を鑑賞することになります。

藤田さんが映画を通じてコミュニケーションを行い、周りの人達と仲良くなりつつ、自身も成長していく様を楽しめる作品となっています。次第に変化していく、奥田さんとの関係性からも目が離せません。

水曜日のシネマ(3) (モーニング KC)

水曜日のシネマ(3) (モーニング KC)

 

 

 

映画を通してキャラクターを感じる

様々なシチュエーションで映画が紹介されるのですが、紹介される映画からキャラクターの様々な事が読み取れるのが、非常に面白いです。

例えば藤田の友人吉田さんが、恋人と別れた悲しみに暮れたまま来店します。藤田さんが前向きになれる映画は無いかと尋ねると、店員の米澤さんが映画を紹介します。紹介する映画は『100円の恋』

百円の恋

百円の恋

 

 

見た事なかったので調べたんですけど、これ女子ボクサーの映画らしく、作風的に前向きになれる映画とはちょっと違うかな…と思ってたんですが。

映画を見た吉田さんは、何度も立ち上がる映画のヒロインの姿に感動し、「痛みを知らない人生は味気ない」と米澤から言葉をもらい、失恋を乗り越えていきます。

元ヤンという過去を持つ米澤さんだからできる、熱ある力強い後押しだったと思います。私にはできないですねぇ。普通にギャグ要素の強い映画とか見せちゃうなぁ…。

米澤さんの紹介する映画はアクションものがほとんどで、強く戦う人を主役に置いた作品が、彼女の強気な性格をよく反映していると思います。また、彼女が映画を紹介するときは、基本的に誰かが落ち込んでいる事が多いのですが、『100円の恋』や『プロジェクトA』が、米澤さんに元気を与えてきた映画なのだと考えると、ちょっと可愛くも思えてきたり…。あ余談ですけど、米澤さんめっちゃ美人です。推せる。

プロジェクトA  (字幕版)

プロジェクトA  (字幕版)

 

 

別の店員滝君は、自身の見た目から苦い過去を持っているのですが、彼が紹介する映画は、今や未来を肯定する作品が多いです。本人も語っていましたが、多様性が認められた今の方が生きやすいという思いが映画のチョイスに表れていると感じます。『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』を感慨深そうに語る彼の姿は非常に魅力的で、受け入れ乗り越えてきた一人の大人の姿に見惚れました。

水曜日のシネマ(4) (モーニング KC)

水曜日のシネマ(4) (モーニング KC)

 

 

紹介される映画が漫画のストーリーとリンクしている場面もあり、キャラクターが映画を通して自分の気持ちに気付いたり、行動を決定したりする瞬間は、胸を掴まれるものがあります。その決断によってストーリーが動くので「おぉ良く言った!」とか「違う、そうじゃない」とか、色んな感動を引き起こしてくれるのですよ。ベタではあるんですが、やはり映画に触発されてって事、私も経験があるので。

博士と彼女のセオリー』から奥田さんが藤田さんの成長を感じた時は「いや違う店長!今はそっちの解釈じゃない!!」って思わず電車の中で声を上げそうになりましたし、『マスク』から素直な自分で勝負する事を選んだ藤田さんには「良くぞ気が付いた!行って来い!!」っと背中を強く押したくなる。(ここ一番のデートに備えている時に見る映画が『マスク』ってのも個人的にはツボ。)

紹介される映画からキャラクターを理解できるし、紹介された映画を知れば、より漫画が楽しくなる。映画と漫画の両軸のストーリーを堪能してこそ楽しめるのが、この漫画から感じられる魅力なのかなと思っています。

博士と彼女のセオリー (吹替版)
 
マスク(字幕版)

マスク(字幕版)

 

 

 

夢の片鱗に苦悩する様に共感し、嫉妬する

あと個人的に見ていてグッと来たのは、店長の奥田さん。彼は若いときは映画監督を目指していたのですが、過ぎ去っていく日常の中で夢が薄れてゆき、それでもあきらめきれない自分の在り方と、どうしようもない現実に苦悩します。

私も夢あって上京し、光のように過ぎ去ってゆく日常に錆びれていったような人間なので、奥田さんの苦しい表情は何度も読み返して、唇を噛み締めました。

 

ただ奥田さんには羨ましいところがありまして。形は違えど、奥田さんは映画で人を感動させる事ができてるんですよ。タイトルが分からないと来店したお兄さんに瞬時に目的のDVDを渡せるし、つまらなそうとぐずった子供にうまくプレゼンをして、作品の面白さに触れさせる。

人を感動させるような映画は作れなかったけど、人を映画で感動させる事はできていた奥田さん。とても遠いですが、微かに夢の片鱗に触れられているような気がするんです。私はそんな彼を、羨ましくも思いますし、嫉妬してしまうのも正直な話。複雑な感情を抱いてしまいます。

 

…さらに余談になるんですが、そう考える度に間違ってはいけないなと自分に言い聞かせている事がありまして。

奥田さんはとにかく映画というコンテンツと向き合ってきたんですよ。なんとなくのあらすじを聞いただけで、映画のタイトルが出ちゃうぐらいに。大人から子供にまでその映画の魅力を説明し共感できる程に。

彼は人が想う以上に映画に情熱を燃やし、没頭し、研究を重ね、映画そのものを愛し続けたんだと思います。誰とでも作品の面白さを共有できるってのは言う程簡単じゃないです。同じ作品のファンでも喧嘩になったりしますからね。ましてや彼の映画の知識はジャンルを問わないときた。これって凄い事なんですよ。届かなかっただけで、監督になる努力は間違いなく重ねてきたって証明になるし、どれだけ映画を愛していたかって証拠にもなると思うんですよね…。何より培った経験が別の形で活かされている事が、正しく楽しんできた証なんだよな…。

奥田さんは間違いなく努力を重ねた、楽しんできた。これは忘れてはならないと、怠惰な自分に言い聞かせなければと思っています。

水曜日のシネマ(5) (モーニング KC)

水曜日のシネマ(5) (モーニング KC)

 

 

 

映画を知っている人程楽しそう

本当に色んな映画が紹介されます。賞を受賞した有名な作品からアニメ映画、果てはピンク映画まで。それはもうたくさん。

映画が好きな人はほとんど見た事ある作品ばかりかもしれませんが、映画を知っているとキャラクターをより深く知れるので、私よりも漫画を楽しめるのかもしれません。私もこれから映画を追って、もう一度読み直すつもりです。

映画は人の心を豊かにする事を、この漫画から学びました。せっかく映画館に通うになったので、これからも雑多に良い作品に巡り会えれば幸せですね。

…しかし、『リング』かー。

―頑張ります…。

水曜日のシネマ(1) (モーニング KC)

水曜日のシネマ(1) (モーニング KC)