予告映像ってのは大事なんですよ
私は「お話の内容が面白そうかどうか」でその映画を見るかどうかを判断するので、予告映像の内容はかなり重要視します。予告で興味をそそられるかどうかが、劇場で作品を見るか否かの判断材料になるわけです。なので本編開始前に放映される新作予告は、次に何を見るかを決める大事な時間になる為、いつも真剣です。
marumakkoriblog.hatenablog.com
そこで度々あるのが、予告で伝えられる作風と、実際の作風が異なる場合がある事。これそんなに珍しい事じゃないんですよ。
幸いにも、「予告に騙された!」という失敗談は無いのですが、「面白かったけど、思っていたものと違ったな」はたまにあって、今回鑑賞した『ジェミニマン』も「思っていたものと違ったな」でした。
…あ、誤解無きように言っておくと、『ジェミニマン』めちゃくちゃ面白かったです。
以下、感想をつらつらと。
『ジェミニマン』鑑賞
— まるマッコリ (@makkori04155) 2019年11月1日
持って生まれた技術が優れていても
心まで強いとは限らない
人間である以上弱さはあるのだ
若い時の自分に出会えたら
自分が経験した苦労はさせたくない
弱さを理解し寄り添えるから
体や心が傷つく事を
科学の進化で肩代わりするのは
果たして正義なのか#ジェミニマン pic.twitter.com/aKnTPOxJu0
まずは件の予告を
この予告から期待した事は
- 若さVS経験
- 自分同士の激しいバトル(多彩なアクションシーン)
という、銃撃戦バンババーン!で、ドンパチドッカーンな映画を想定して見に行った訳なんですよ。確かに激しい銃撃戦やバイクでの逃走劇など、アクションシーンが皆無ではなかったのですが…。
この映画のメインは、たぶんそこでは無いんですよ。
ヘンリーが抱える傷
まず違ったのは主人公ヘンリーの印象。確かに技術があって強いのですが、心はさほど強くない人物でした。歴戦の戦士なのは間違いないのですが、自分が歩んでこなかった幸せを憂い、殺し屋である自分に迷っている。その迷いから引退を決意するところから物語はスタート。
彼の語る言葉の節々から、心が疲弊しきっている事が伝わってきました。戦いの最中で迷うような人間ではなかったのですが、戦う自分に対してどこか後ろめたい気持ちを常に抱えているような人物だったなと。この主人公から漂う悲壮感が物語の根幹にじわじわと効いてくるのですよ…。
クローンとの対峙、その時ヘンリーは…
ヘンリーが若かりし時の自分、ジェミニという名を冠したクローンに出会った時、彼が選んだ選択は「説得」。戦う事で相手を制圧するのではなく、まるで自分の息子とのように、経験してきた苦労や苦悩に寄り添い、優しく接する事に着手しました。
自分が歩んできた過ちを辿らせたくない、自分が果たすことができなかった幸せの数々を獲得していって欲しいという、まさしく親心のような感情が芽生えるのです。
何も知らされず戦っていたジェミニも、自身とそっくりな容姿や、まるで今まで見てきたかのように披露される自身の内情から、自身の出生や存在について疑い始めます。そして2人は協力する道を選んでゆく…。
キャッチコピーや予告からは「若さVS経験」という印象を受けていた為、どちらがどのように相手を制圧するのかを期待して劇場に足を運んだのですが、まさか共闘する道を選ぶとは。
見方によっては、これまでの経験からより自分自身を理解していたヘンリーの方に軍配があがっているようにも見えるのですが、「勝利」や「制圧」とは、かなりかけ離れていたかと。ヘンリーが説得の道を選んだのは、あくまで「親心」だと思っているので、勝った負けたの世界での話ではなかったと思います。
...しかし、自分の若い時のクローンと対峙した時に説得の道を選んじゃうの、凄いなぁと感心するばかりです。私ならあまり関わりたくない、もしくは申し訳ないけど消えて欲しいと思ってしまうので。「もう1人の自分」なんて、正直いて欲しくないんですよね。ましてや過去の自分なんて黒歴史そのものなので、速やかに消えてほしい…。
ただヘンリーにおいては、ジェミニの事を「もう1人の自分」と定義している訳では無く「たまたま自分とそっくりの他人」という認識でいたのかなと。そうじゃないとジェミニと息子のように接する事なんてできないと思うんですよね…。
「クローン」についてのあれこれ
共闘していく中で出会う新たなジェミニ。戦闘する為だけに生まれてきたようなその姿や能力に、ヘンリー達は愕然とします。そして明かされるジェミニ誕生の経緯。クレイが語る戦争の悲惨さ…。
思うに、クレイもまた、ヘンリーのように戦いに疲弊しきった人物だったなと。戦いによって疲れ果て、傷ついた心を抱え、日々を過ごしていた。
違ったのは、ヘンリーは退く事を選択し、クレイは誰かに肩代わりさせる事を選んだという点。
クレイへの一撃をヘンリーが放ったのは、かつての仲間を憐れむ悲しみからか、息子のような人間に業を背負わせたくないという親心からか。いずれにせよ、戦いに決着をつけたヘンリーは無事に引退。ジェミニを作った組織も解体され、ジェミニは新たな名前と共に、新しい未来を歩みだすのです。
問題となってくるのは、やはり「クローンの存在可否」についてと、「クローンに人間の肩代わりをさせていいのか(クローンだから傷つけても構わないのか)」という点でしょう。
「クローンの存在可否」については、映画の中で答えは明確になっていませんが、組織の解体から考えるに、やはり良い事とは言えないのでしょう。しかし、ジェミニを殺さなかった事から考えると、存在そのものを否定している訳では無さそう。作るのはよくないけど、だからといって殺す事も良くない、という事なんだと思います。
また「クローンに人間の肩代わりをさせていいのか」については、明確に否と回答が出ているかと。その後のジェミニの待遇を見ると、「クローンであっても感情や心がある以上、別固体である」という答えが見えてくるかと考えられる為です。学校でのヘンリー達の会話の中でも、「必ずしも同じ人間になるとは限らない」といった趣旨の発言がなされており、「クローンでも1人の人間」として扱っている事が見て取れるかと思います。
リアルなCGは見応えアリ
映像的な話をすると、本物と遜色ないCG人間とのアクションは、中々見応えがありました。ド派手な演出とはかけ離れた地味なものなのでしょうが、違和感がなくCGと人とがやり取りしているという事に驚きです。これだけでも見て欲しいところ。ヌルヌル動く2人目のウィル・スミスを堪能してもらいたいです(笑)。
日本のウィル・スミスも倍プッシュだぁ!
私は字幕で見たのですが、吹き替え版も面白そう。『メン・イン・ブラック』でウィル・スミスの吹き替えを担当した江原正士さんがヘンリーを、『アラジン』などでウィル・スミスの吹き替えを担当した山寺宏一さんがジェミニを担当。こっちも気になったのですが…お時間の都合で泣く泣く字幕版を鑑賞した次第。
円盤になったら見直したいな…。吹き替えが変わらなければいいけど…。
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できるだけ予告と本編のギャップは無い方が良い
個人的に思うのが、やはり予告で正しく作風を伝えきれていないのは非常に問題あると思います。未見で申し訳ないのですが『ベイマックス』や『モアナと伝説の海』も予告と本編にギャップがあったと聞きます。それは予告として成立してるのかな…。
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「これはこういう作品ですよ」を正しく伝えないと、呼べるはずだったお客さんも呼べなくなっちゃいますし、「思っていたのと違った」は作品への低評価に繋がると思います。「こんな宣伝の方が日本人好み」と本編とはズレた宣伝をするの、なんとかなりませんかね…。
今回の『ジェミニマン』に限っては、「ドンパチする映画は苦手だけど、考えさせられる映画は好き」みたいな人に絶対刺さると思うんですよ。人間ドラマが好きな人にはぜひ見て欲しいのだけれど、あの予告だとどうしてもアクション映画のイメージが抜け切れない。これは非常にもったいない事だと思うんですよね。うーん…。
前向きに考えると「衝撃の展開だった」みたいな感想になるとは思うんですけど、結局見てもらえなければ意味がないので、やはり入口はしっかり正しく設置しておくべきかと思います。
今回の一件で収穫だなと感じた事は、実際に作品は見てみないと何も分からないというところですね。案外世間ではつまらないと評判の作品も、自分にとっては面白いのかも。これからももっといろんな映画を見ていこう…。そして感想がしがし叩いていこう…。